第一徴兵保険の社員にお礼を言った高木恵三郎


『第一徴兵社報』は第一徴兵保険株式会社発行。昭和9年12月発行号が123号。26ページのうち、16ページが模範契約者の紹介で、赤ん坊や家族の写真であふれてゐる。生まれてすぐに保険の契約をしてゐて、裕福な家庭が多い。

 次に多いのが10月18日に行はれた、靖国神社神門の献納奉告祭、竣成奉祝祭の記事。神門は第一徴兵が献納したものだった。扉には大きな菊の御紋があしらはれてゐる。写真では参道の中央に祭壇を設け、太田社長らが玉串を捧げてゐる。参列者に葦津耕次郎同社相談役の名前はない。賀茂百樹宮司直会の挨拶に

皆さん一寸御覧になりますと他の建物と調和が取れぬ様にお思ひになるかも知れませぬが、当神社は計画を定めて一時に造営せられた神社でなく、本殿は明治五年に、拝殿は同三十四年に建築したるが如く、七十年の間に、その時々に従つて造られたのでありますから、已むを得ぬ事であります。 

 とある。建造物は年代がばらばらなので調和が取れないのは仕方がない、あとで篤志家が出てきれいに造営してくれるのを待つのだと言ってゐる。

 囲み記事の社内ゴシップといふのがいい。

 

 十月廿五日午後二時頃、本社の六階へ一人の熱血漢が訪問して来て「一番偉い人に面会したい」と申出られた。重役不在の為山田庶務課長が面会すると、「此の度靖国神社へ立派な神門を献納された事は誠に感激に堪えない。社員の方に一人一人お礼を述べさせて戴きたい。」と熱心に頼み込んだ。(略)

 此の六階の人々だけにでも礼を言はして貰ひたいと言つて、社員を中央に集め「現今弓削道鏡のやうな資本家ばかりの多い中にあつて、此の会社が靖国神社にあれほど立派な神門を献納されたといふことは非常に感謝に堪えないことであります。(略)」と感涙に咽びながら挨拶をして帰つて行かれた。久留米の人高木恵三郎といふ憂国の士である。                                                                                                             

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