中村孝也「内鮮融和は相互の必要である」

続き。中村孝也が国史教育でもう一つ改善したいことは、朝鮮について。

実に我が国史は朝鮮を除外しては正しく理解し得られないのであります。(略)そして学んで得るところのものは、朝鮮は政治的に独立力の弱いところであるといふことである。それは朝鮮の歴史が極めて明白に示してゐる大いなる事実である。その朝鮮は内地と融合し同化することが最も正しく且幸福である。内鮮融和は相互の必要である。 

 日本書紀では神功皇后が朝鮮を攻めたとき戦闘はなく、一人の死傷者もなかった。王子は人質に取られ、工芸品を奉献させられた。皇后側が戦はずして勝った。しかしさういふことは改めて教へるべきではない。

 知らない人々に一千数百年前の所伝を知らせて、新たに内地に対する不快と敵愾心とを挑発することありとせば、教へるは教へざるに若かず、内地の優越感を以て朝鮮に臨むことが教育の本義から見て避くべきことを知り得るでありませう。

 朝鮮の人が不快になるやうなことは、教へない方がよい。文化的な交流とか、神功皇后新羅天日槍命の子孫だとか、内鮮融和に役立つことを重点的に教へるべきだといふ。

 豊臣秀吉朝鮮出兵についても、改善案を示す。

朝鮮出征といふ事件を扱つて、そして内鮮相互の敵対感情を誘発させることなく、却つてこれを利用して、雨降つて地固まるの譬のごとく、内鮮融和の資に供しようといふのだから、一見無理な注文のやうに見えます。併し必ずしも左様でありませぬ。