正真正義「アメリカは日本が作った」

 正真正義『綜合帰一の新日本の創造』は国民思想指導原理研究会発行。手元のものは昭和13年1月の3版。

 12年8月の再版の辞が載り、6月の初版発行時のことを回顧してゐる。

 本書は理論上からも実際上からも相当の研究を重ねたものであるから、研究不足や認識不足を笑はれるやうな心配はないが、何分にも思想問題の最も六ケ敷い今日の日本に問ふのであるから出版届を出してから三日間は相当心配した。(略)

 出版法に基いて出版届を出して三日間待つた。内務当局から何の通知もないから、もう安心だといふので頒布に取り掛つた。 

 検閲に引っかかるのではないかと三日間心配してゐた、とある。許可された場合は何の通知もないとしてゐる。

 その著者の主張は、アメリカは日本が作ったといふことにある。それは次のやうな理由による。日蒙戦役(元寇のこと)で、日本は蒙古を撃退した。蒙古はヨーロッパにまで版図を広げてゐたので、日本のことも広まり、黄金の国ジパングが噂となった。その後航海に出たコロンブスアメリカ発見、アメリカ大陸の東から西への発展、そしてペリーの日本来航と、つながってゆく。

 いはば日本のまいた種がめぐりめぐって、日本で実ったのだと整理する。

日本人も気付かず、亜米利加人も気付かぬ中に日本は亜米利加を作り、亜米利加は亦日本を作つて、東西両文明も新旧両大陸文明も一連の相関性を以つて発達して来て居ることは実に不思議な位である。 

 このやうに、世界を綜合帰一して躍進日本を創造すべきだといふ。蒙古に対する攘夷を評価する一方、アメリカは日本の恩人だとして開国を肯定的に見てゐる。アメリカに対しての攘夷には触れず、単なる国粋主義でない。「アメリカは日本が作った」とまでいへるかどうかは別として、独自の発想がうかがへる。

 余禄では、日本による倭寇を大陸政策として積極的に評価。ただし倭寇といふのは不当な名称で、八幡船事件などと呼ぶべきだと注意してゐる。

 

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