これは広報マンの遊びなのである‐グループGeraの『広報痴典』

 『広報痴典』はグループGera編・発行。昭和47年2月発行。福岡県内6市の担当者が集まり、広報に関する用語を辞典風にまとめたもの。冗談の中に毒や本音が吐露されてゐて面白い。もとは同人誌『Gera』の連載。
 例えば

あいさつ【挨拶】 くだらない首長ほど新年号の広報紙に載せなければならないと信じているもので、たいていの場合秘書課長や広報担当者が代筆する。内容は毎年変わらないのが普通とされている。

【平易な文章】では、何を言ってゐるのかさっぱり分からない、ある市長の年頭の挨拶が晒されてゐる。

イエローペーパー【yellowpaper】 盆の暑中見舞と暮の謹賀新年の新聞だけを出し、カネくれ、カネくれと回っている新聞のこと。新聞は出さないでもらって回っているのもいる。この新聞屋サンから、あんたは同業タイといわれたことがある。そのときはショックだった。

 からは商法改正前の様子が分かる。「新聞は出さないでもらって回って」成立できてゐたのですね。
 いはゆる一般紙の記者との仲は微妙。知らないことは教へてあげるが、でしゃばることはしない。

ほぞん【保存】 とっておくこと。「保存してください」と呼びかけてもほとんど保存されないよな、広報紙は。

 かういふボヤキも多い。公務員でありながら記者でもあるところが興味深い。

せんぎり【千切】 財政課でつくる予算や決算は、千円単位になっている。500,000千円。それをそのまま広報紙にのせるのは、市民はこんな数字に慣れないから、不親切とされている。(略)

 このやうになるほどと思はせるやうな用語解説もあって勉強になる。
 「はじめに」では「ひとことで要約すると、これは広報マンの遊びなのである」とある。しかし片岡純治日本広報協会主幹は序文の中で、「脈々とした情熱がほとばしっている」と評価。「Gera同人のまじめな本」と言ってゐる。