丸山作楽の土曜日曜休暇論

 今年は神武天皇崩御してから二千六百年とされ、崩御日とされる4月3日(日曜日)に、橿原神宮で大祭が行はれる。
 『随在天神 カムナガラ』は月2回、惟神学会から刊行。156号は明治23年7月12日土曜日発行。表紙には明治二十三年、紀元二千五百五十年、西暦千八百九十年と、皇紀も載せる。中に盤之屋作楽の「日本の文字及文章に就て」がある。盤之屋は国学を学んだ政治家・外交官・歌人の丸山作楽。女といふ言葉の字義だとか、西洋インク禁止令について触れた中に、土曜日と日曜日の休暇論を述べてゐる。
 これによれば、1・15・28日の休みだったのが、今は土曜日半休で日曜は一日休み。これは西洋との交際上さうなったので、西洋崇拝主義、他人の猿真似ではないかといふ意見があった。これではいけない。
 そこで丸山は、日本人が土曜日と日曜日に休む理由を考へ出した。神武天皇が即位したのは当時の暦の元日。今の太陽暦に直すと2月11日、これが土曜日にあたる。「是れは日本人が記臆すべき事であります」。即位した2月11日からさかのぼった元日、つまり皇紀元年一月一日は日曜日にあたる。即位前だから厳密には皇紀以前だが年を数へるには便利なので、これで計算することにする。この元日が日曜日だ。「此の両日の日曜土曜に当る事は日本人が記臆すべき事であります」。

神武天皇の御即位の初年の一月一日が日曜日だから、之を紀念の為めに休暇にするとしても宜しい。又御即位の日は土曜日だから、日本人は復た此の日をも休暇とするとしても宜しい。

 これなら日本人が毎週休むたびに、神武天皇に思ひを馳せることができる。ただ、日曜についての論旨はちょっと苦しい。土曜についても、現代人が休む理由として神武天皇を持ち出すのはどうだらう。
「土曜日に出勤してほしいんだけど」
「土曜日は神武天皇が即位したので休みます」
「えっ」
「土曜日は、神武、天皇が、即位したので、、休みます」