富士山で国体を解説した鈴木重道















































 











『国体小論』は大日本神祇会朝鮮本部昭和18年11月に発行した小冊子。著者の鈴木重道は伊佐須美神社宮司で、前朝鮮総督府の祭務官。
 43頁しかないが、自分の言葉で国体についてわかりやすく解説してゐる。
 冒頭に著者の姿勢が表れてゐる。

国体に就いてのお話と云へば、堅苦しいむつかしいものだといふ感じがいたします。然ながら私どもは毎日この国体の中に生きてゐる。寝ても覚めてもこの国体の中に息をしてゐるのであります。このわれわれの毎日の生活は決して堅苦しくもむつかしくもありません。それですからこの私どもがその中に生きてゐる国体は決して堅苦しくもむつかしいものでもあるまいと思ひます。

 そして、日本人なら誰でも知ってゐる富士山で国体を解説してゐる。
 これによると、富士山の七、八合目くらゐに雲を描く。此処から下が神武天皇以来の日本の歴史だ。雲から上が神代で、頂上がいざなぎ・いざなみの国生みだといふ。これを更に先に延ばすと、一点に集中し、円錐形が出来上がる。
 頂上から先は造化三神から神代七世、古事記冒頭部分になる。この部分の神は隠身で人間の目には見えない。
 目下円錐の足は下にぐんぐん伸びて、大東亜から全世界に広がっていくのだといふ。御稜威の光は全世界に広がってゆく。このとき、国民は天皇のみこともちとして、しっかり修養せねばならない。
 かう見てくると、円錐の頂点である天御中主神を尊ぶべきかといふと、さうではない。御中主は指導原理を示すがあくまで隠身神。
 

天之御中主神天照大神の本源の神と考へて対立せしめてゐる人がありますが、古来我国では天之御中主神を祀つた神社は殆どなく、宮中に於てもお祀りになられないのは、何処までも隠身の原理の神であつて、現実の祭祀は天照大神を大本と仰ぐからであります。

 天御中主神を祀るのは宜しくないといふ。見えない原理と見える現実とを分けて、現実の方を重く見るといふ態度を取ってゐる。