神道奨学会の『神道講習録』

 教派神道十三派からなる神道連合会を前身として組織されたのが神道奨学会。大正十三年から毎年、神道講習会を開催した。第四回の昭和二年の内容に、第三回の内容を加えたのがこの『神道講習録』(昭和3年2月10日、大成教教務庁発行)。そのため、15人の講師のうち誰の講義がどちらの年に行われたのかがちょっとはっきりしない。

 巻末に一から四回の講習会修了者がズラッと宗派別に並んでゐる。第二回の大成教に野尻祐通、第三回の神道本局に元木福治の名が見える。

 内容は大体、〜教概論といったもの。日本大学関係者が多いのは、当時同大学に宗教科があったから。中には現代から見るとあれれと思ふものも。佐々木英夫日本大学教授は

之を要するに、我国に於ける神道に犯罪者の少ないのは、新い宗教であるからであつて、仏教に多いやうに見えるのは、只位牌があるから仏教徒となつてをる位のものであつて、仏教を信じてをるのではない。只キリスト教が百分比にすると多いのは、旧教の耳語懺悔と同じことで、悔改めれば神が救つてくれると云ふ誤つた観念に基いたものである

 と言ってゐる。神道を十三派のものに限って新しいとしたり、仏教に甘くてキリスト教に辛かったりする。神道教師の講習会とは言へ、これで良かったのだらうか。

 目次 序:編者(椎名正雄)/第四回講習会開会の辞:日本大学内務省警保局長法学博士山岡萬之助/訓示日本大学総長枢密院副議長法学博士男爵平沼騏一郎/宗教学概論東京帝国大学助教授文学博士加藤玄智/神道学概論日本大学講師文学博士田中義能/仏教概論日本大学講師文学博士椎尾辨匡/基督教概論日本大学講師/文学士今岡信一良/神祇史日本大学講師文学博士/祝詞作文法宮内省掌典下田義照/古典の大要日本大学講師文学博士山本信哉/惟神の精神伯爵二荒芳徳/社会教育日本大学講師文部省社会教育課長小尾範治/社会事業日本大学講師生江孝之/群集心理日本大学講師文部省宗教局課長松尾長造/宗教と犯罪日本大学教授佐々木英夫/外来思想批判文学博士深作安文/宗教行政日本大学講師文部省普通学務課長菊池豊三郎/欧米諸国に於ける宗教事情文部省宗教局長下村寿一/神道各教派本部及東京出張所/神道講習会修了者氏名